第七夜小説2026/09/06 連載マリカとカリナと足りない在処 第七夜児玉雨子8 エレベーターの扉が開くと、スーツを着た若い男がこちらを見るやいなや、向こうで固まったまま突っ立っていた。エレベーター内の鏡で施術後の肌を眺めていたので、到着までにマスク装着が間に合わなかった。カリナは俯きながらも目だけぎょろつかせてこちらを見つめてくる男に舌打ちして、早歩きで堅牢なエレベーターから出る。ビルの外に出てから、バッグの中に折りたたんでいたマスクを耳にひっかけた。顔の下半分と首の点状#拝金主義#大量消費社会#シスターフッド#人間関係#フェミニズム
第六夜小説2026/09/05 連載マリカとカリナと足りない在処 第六夜児玉雨子6 便器に溜まった尿を覗く。大阪に来てはじめてのシャンパン尿だった。今夜は上林のおかげで、ユナーシュに来てからやっとシャンパンが二本——のベルエポックが一本と、その後に来た客が場内指名を入れてきて、この店では最低金額だが六万円のものが一本空いた。 派手なネイルを施した爪の先でトイレの流しボタンを押すと、合計一六万円が音を立てて下水道に流れてゆく。高級ブランドを買ったり貰ったりするよりも、この瞬間#拝金主義#大量消費社会#シスターフッド#フェミニズム#人間関係
第五夜小説2026/09/04 連載マリカとカリナと足りない在処 第五夜児玉雨子5 店の住所が印刷された白い空名刺に、澪標カリナ、と手書きの名前とラインのIDを書き込んでゆく。 体入したその夜のうちに入店が決まった。翌日の昼過ぎ、ウォーキングがてら中之島周辺を散策していると、淀屋橋の欄干にあった市章が目に入った。写真に撮ってChatGPTに訊いてみると、数秒ほど思考の沈黙があって、みおつくし、という名称を返答した。澪標/身を尽くし/身を突く串——ずらずらっと出力されるその由#フェミニズム#社会問題#人間関係#拝金主義#大量消費社会
第四夜小説2026/09/03 連載マリカとカリナと足りない在処 第四夜児玉雨子4 ファタールではタブレット注文で管理していたが、ユナーシュではキャバ嬢が直接黒服を呼ぶのだと教わる。つまり、黒服とうまく連携を取らないと売上を伸ばしづらいのだろう、ここは店の女の子たちと黒服たちの距離が近い。ファタールにいたころはマネージャークラスの黒服ならまだしも新人の黒服の名前なんて覚えなかったし、誰かを呼ぶときは「おい」だったり、そのまま「黒服」とか「誰か」と呼んだりしていたから、ユナーシ#フェミニズム#社会問題#人間関係#拝金主義#大量消費社会
第三夜小説2026/09/02 連載マリカとカリナと足りない在処 第三夜児玉雨子3 空っぽの部屋の中ではじめに組み立てたのは、ドレッサーだった。以前はLEDシートを貼った手作りの女優ミラーをデスクに立てかけてそのまま使っていたので、今回の引越しを機に新調した。電動ドライバーの音がめいっぱい鳴って反響するたび、今ここに助けてもらえるような知り合いはいないんだぞ、と耳元で叫ばれているようだった。そうして組み立てた大理石模様のドレッサーのスイッチを押すと、鏡の縁に内蔵されたライトが#フェミニズム#社会問題#人間関係#拝金主義#大量消費社会
第二夜小説2026/09/01 連載マリカとカリナと足りない在処 第二夜児玉雨子2 Kyrieに連れられてマリカは店の外階段に出た。階段に座ったKyrieに隣に来るよう促され、マリカもミニドレスのまま階段の上に並んで座った。隣のビルのキャバクラやスナックの看板の光を見下ろして、ミニドレスの化学繊維でかゆい脇腹を搔きながらおだやかな夜風に当たる。夜風といってもビルの排気口や室外機から出てきたぬるくて埃っぽいものだけど、風は風だった。 「ほんとに、北新地で働いてなかった?」 アイ#フェミニズム#人間関係#拝金主義#大量消費社会#シスターフッド
第一夜小説2026/08/31 連載マリカとカリナと足りない在処 第一夜児玉雨子1 今月あんたの肝臓になったるから負けんな、と扉越しに声をかけられ、便器に座っていたマリカは顔を上げた。今日のヘアメイクでは髪をアップにして固めてもらっていたので、そのまま引っ張られている方向に首を任せるようにすると、勝手に視線が上がって、姿勢も正される。「よゆうっすー」マリカは立ち上がり、薄い尿を見おろす。何十万円もかけられたシトリン色にきらめく酒も、この体を通るとその値段をすっかり吸い取られて#フェミニズム#人間関係#シスターフッド#大量消費社会#拝金主義