最近の作品

敷布団と枕と25年
敷布団と枕と25年
エッセイ

 連載

敷布団と枕と25年

古賀及子

 毎晩床で寝ているという人がいた。  短大を卒業したあといくつか渡り歩いたアルバイト先の先輩だった。小さな料理屋でアルバイトの人数が少なかったから、シフトが重なることが多く暇な時によく話をした。 「飲みすぎて帰ってきて、布団までたどりつけずに床で寝ちゃったんだよ、そしたらそれが気持ち良くて、くせになったんだな」と先輩は言う。床というのは絨毯を敷いたやわらかい床ですらない、フローリングの本気の床らし

極小の器
極小の器
書評

極小の器

畠山丑雄

わたしたちは一人でしか夢を見れないし、一人でしか死ぬことができない。そうじゃありません? あるいは、それが嫌で男たちは戦に出るのでしょうか? 私は戦に出たことはない。無論出たいとも思わない。ここでの「男たち」というのは本作の語り手である女房の「ちゃあ」が生きた戦国時代の男たちである。当たり前であるが、戦国時代の男たちは戦に出るのが当たり前だった。その当たり前はしかし少なくとも私にとっての当たり前で

(4)SEAGULL/かもめ
(4)SEAGULL/かもめ
小説

 連載

(4)SEAGULL/かもめ

小林エリカ

西浩孝さん 場所:爆心地公園とその向かいのラブホテル「SEAGULL」 時:2017年春 あなたは長崎へやってきたばかりで、職のない状態で、一歳の子どもを抱いて桜の花が咲くか咲かないかの頃の爆心地公園にいて、向かいにあるラブホテル「SEAGULL」を見ていた。 ピンク色の建物に、波模様を配した大きな看板。建物の駐車場入り口には、のれんのようなゴム製の目隠しがぶら下がっている。 年配の男とおそらくデ

(5)トトロの庭
(5)トトロの庭
小説

 連載

(5)トトロの庭

小林エリカ

直実さん 場所:広島安佐南区家の庭 時:2006年夏 あなたは広島へやってきてはじめて、かつてテレビで観た映画『となりのトトロ』の中の雑草が全部本当にある草なのだということを知る。それがあなたにとっての広島だった。 ムラサキツユクサ。ドクダミ。シロツメクサ。オオバコ。スギナ。外来種のポピー。それから、外来種のタンポポ。 あなたは大阪西成区のアスファルトしかない場所で育ったから、学校や公園なんかでし

(6)カステラの重さについて
(6)カステラの重さについて
小説

 連載

(6)カステラの重さについて

小林エリカ

裕紀子 場所:名古屋の祖父の家 日時:1985年夏 あなたは、長崎の爆心地公園で、あなたの祖母のことを、話してくれた。 実は母方の祖母が長崎の出身なんだ。祖父の後妻さんだから血の繫がりはないのだけれど。 あなたの祖母は名古屋へ嫁いでいて、あなたは彼女と一緒に長崎へ行ったこともなかったから、あなたは長崎のことを何も知らない、という。 ただ知っているのは、彼女のソウルフードがカステラだということ。 泊

(3)スケッチ1
(3)スケッチ1
小説

 連載

(3)スケッチ1

小林エリカ

スケッチ1 ワンピースの白い生地はそのまま残り、小花模様の色濃い部分だけがみんな焼け焦げ抜け落ちていた。原子爆弾が炸裂したとき、そのワンピースを着ていた少女の肌は、模様の部分だけ焼けたという。 私は、そのワンピースが展示されているのを、あるいは写真で見たのだったかもしれない。光は白に反射し、黒に吸われる。原子爆弾の光線もおなじだということを、私はそのときはじめて理解した。 ワンピースの袖の下、

イカの盲点
イカの盲点
小説

 連載

イカの盲点

高瀬隼子

 おまえ絶対ろくな死に方しないよ、というのは環太が兄に言われた言葉だ。  二つ年上の兄は環太を傷つけるためにそれを口にしたのだけど、野球部の先輩から借りた漫画で覚えたばかりの台詞を使ってみたいという気持ちもあり、というかむしろ声が口から発される時にはそちらの方が大きくなっていた。それはどこか誇らしげでもある態度から見て取れて、環太は投げつけられた言葉の中身よりも、兄のフンッといった表情の方に腹が立

山田邦子から黒沢かずこへ。「女芸人」映画の系譜
山田邦子から黒沢かずこへ。「女芸人」映画の系譜
対談

 連載

山田邦子から黒沢かずこへ。「女芸人」映画の系譜

五所純子 ゆっきゅん

黒沢かずこにDIVAを感じて ゆっきゅん DIVAを語る上で必ず話しておきたいテーマがあって、そのひとつが「女芸人」だったんです。私は子どもの頃から「女芸人」が大好きで、彼女たちにDIVAを感じて生きてきました。そのなかでも一番DIVAを表現していたのが森三中の黒沢かずこなんです。 「千手観音かずこ」っていう黒沢さんのペルソナがあって、倖田來未の『キューティーハニー』とかMISIAの『Everyt

何色気分?

今日の短歌が出てくるよ

特集

  • 小説と漫画の接点