
連載
つげさんの日々
藤野千夜
三年前に買ったつげTシャツをよく着ている。「紅い花」のキクチサヨコとシンデンのマサジ、釣り人の男の顔が、グレイの地に黒でプリントされている。 つげさんが長く暮らす東京都調布市の文化会館(たづくり)で最初の「つげ義春展」が開催されたときの記念グッズだ。一度、それを着て近所のコンビニに寄ったら、同世代(六十代前半)くらいのレジの女性に、 「あ。つげ義春」 と言われて、結構びっくりしたけれど嬉しかった。

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つげさんの日々
藤野千夜
三年前に買ったつげTシャツをよく着ている。「紅い花」のキクチサヨコとシンデンのマサジ、釣り人の男の顔が、グレイの地に黒でプリントされている。 つげさんが長く暮らす東京都調布市の文化会館(たづくり)で最初の「つげ義春展」が開催されたときの記念グッズだ。一度、それを着て近所のコンビニに寄ったら、同世代(六十代前半)くらいのレジの女性に、 「あ。つげ義春」 と言われて、結構びっくりしたけれど嬉しかった。

つげ義春対談 無意味という豊かさ
町田康 又吉直樹
異能の漫画家、つげ義春。解釈を拒み続ける不朽の問題作『ねじ式』を筆頭に、その唯一無二の世界観が、いまなお世界を魅了しています。つげ義春は、いったい何を描いたのか。つげ作品を愛してやまない作家の町田康さんと又吉直樹さんが、つげ義春の底知れぬ魅力と創作の真髄を解き明かします。 司会・聞き手:渡辺祐真 ── 今年2026年、つげ義春さんは惜しくもこの世を去られました。つげさんを取り上げるにあたり、まっ

連載
漫画は「生じる」もの
長嶋有
大江健三郎さんと二〇〇七年に対談した際、漫画の話をした。この対談は公開の場で行われたもので、活字にもなっている(『大江健三郎賞8年の軌跡 「文学の言葉」を恢復させる』講談社刊)のでよければ参照してもらいたいが、ここで二人が語っている漫画は『PEANUTS』と『パタリロ!』だ。 谷川俊太郎が邦訳した前者はともかく、いかな大ヒットマンガとはいえ後者の方は、大江さんとの限られた時間の対談で話し合う「漫画

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忘れられない尻と便
小山田浩子
いまも昔も私はたくさん漫画を読む方ではなくて、特に子供時代は家にほとんど漫画がなかった。学習漫画とか従兄か誰かが忘れていったせいで第13巻だけあるミスター味っ子のコミックスとか進研ゼミのDM小冊子とかそんな限られた漫画ばかり読んでいた私は、あるとき親に届いた『通販生活』でつげ義春の漫画を見つけた。カタログハウス刊行の『通販生活』には、当時もいまも商品ページ以外に読み物のページがたくさんあって、その