
蠱王
市街地ギャオ
夜が朝に変わる瞬間の美しさを人々は毎日見逃している。尿意で中途覚醒した男は、排尿の最中、淡い意識の表層でそのようなことを考えていた。 寝室の掃き出し窓から覗く空はうっすらと白みはじめている。男は窓を開け、今にも浮かび上がってきそうな地平線に目を凝らした。できることなら、これを毎日眺めていられる仕事に就きたかった。夜行性の虫のように、朝日の気配を見届けながら帰路に着き、日中は人の目の届かない場所に隠

1993年、大阪府生まれ。大阪府在住。2024年、「メメントラブドール」で第40回太宰治賞受賞しデビュー。
mさん
性別:いずれでもない
よくないところは紙の本にまとめられてないとこ!! こんな名作、どんどん布教したいしどこでも読みたいのに……
OKTANGさん
30代、男性、好きな作家:市街地ギャオ、西加奈子、金原ひとみ
男の身に起きることを淡々と実況中継のように綴っていく文体は、過剰な熱を帯びておらず、するすると読み終えてしまいました。 けれど読み終えた後、「選別される命」であるオオクワガタと人間の対比(というか相似)の描写があまりにグロテスクで(私はどうしても、やまゆり園の事件を想起してしまい)、暗澹たる気持ちになりました。 評価される現実世界に適応しようとした(がしきれなかった)結果、より現実世界の価値観を純化した価値体系を持つ世界を再現してしまうという構造は、一見フィクショナルなようで非常に現実的です。 元々社会的な作品を描く著者だとは感じていましたが、より強くその性質が出ている作品だと感じました。この短さでこれだけの密度と広がりが同時に描かれていることに驚嘆しつつ、障害者=選別される側であるというイメージが再生産されているような印象も残り(作品自体が優生思想を批判的に描いていても)、読み終えた今もぐるぐると心に残っています。 このぐるぐると渦巻くものは、自分にとっても社会にとっても必要なぐるぐるのような気がしています。
ひぐれさん
20代、女性
愛っていう字はカクついているはずなのにやわらかい雰囲気がある。その違和感みたいなものが、愛そのものだなと思うし、この男の愛もそんな感じに受け取った。正しい愛なんか定義はなくて、愛を持つときに出てしまう人間の底にある当たり前の暗い感情を「ダメだよ」とかいえないから、この男のことを気狂いとももちろんいえない。でも、男が操ってるように見えて操られてね?という感じもなんだかそれも愛みたいだなぁと皮肉で面白かった。