
小説
話子さんのはなし
滝口悠生
話子さんが毎朝起きる時間は日によってまちまちだった。年寄りだから、早起きである。 午前四時頃に目覚めて体を起こすこともあれば、六時くらいのこともある。平均すればだいたい五時頃が多い。夏ならば五時はもうすっかり日がのぼって外は明るいが、いまは冬だからまだ真っ暗だ。 山間の集落の外れにある話子さんの家の寝室は、一階の南側にある和室である。話子さんは眠るとき雨戸を閉てない。不用心だと思うが、頑とし

話子さんのはなし
滝口悠生
話子さんが毎朝起きる時間は日によってまちまちだった。年寄りだから、早起きである。 午前四時頃に目覚めて体を起こすこともあれば、六時くらいのこともある。平均すればだいたい五時頃が多い。夏ならば五時はもうすっかり日がのぼって外は明るいが、いまは冬だからまだ真っ暗だ。 山間の集落の外れにある話子さんの家の寝室は、一階の南側にある和室である。話子さんは眠るとき雨戸を閉てない。不用心だと思うが、頑とし