
アワーミュージック
金原ひとみ
(編集部より)本作には暴力、性加害を描いた場面があり、お読みいただくにあたって、強い精神的負荷を伴う可能性がございます。 ****** えーすげー。ガチ? トシヤは声を上げながら、私の指示通りロープで引き寄せた船体を摑んで、桟橋からクルーザーに乗り込む。後に続くミツオも、足元を確認しながら慎重に飛び移った。ヨリが乗り込むのを手を貸して手伝うと、皆にライフジャケットを配り、エンジンをかける。

作家
1983年、東京生まれ。2003年、『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年、同作で芥川賞を受賞。2010年、『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年、『マザーズ』でドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。著書に『アッシュベイビー』『AMEBIC』『ハイドラ』『持たざる者』『マリアージュ・マリアージュ』『軽薄』『fishy』『デクリネゾン』『腹を空かせた勇者ども』『ナチュラルボーンチキン』『マザーアウトロウ』、エッセイに『パリの砂漠、東京の蜃気楼』『踊り場に立ち尽くす君と日比谷で陽に焼かれる君』などがある。
Kさん
40代、女性、好きな作家:金原ひとみ
金原ひとみさんの小説がWebで読めるなんて! 過去に受けた凌辱に対し、友人主導とは言え本気で復讐に立ち向かっていく過程に本当に実行してしまうのかとハラハラしたけれど、終わってみればやり切った感で昇華、ラストは爽快ですらありますね。 一連の出来事には常に$㎜の曲があり、場面場面での曲のあり方の変化も良き。 片親パンやタイミー等、流行のワードが盛り込まれていることで読み返すときに時勢を反芻でき、その時代を生きていた証のようでとても好き。
佐野夕紀さん
30代、性別:いずれでもない、好きな作家:小川洋子
殺人の計画が、そのまま友情の実技になっているのが奇妙に爽やかでした。ヨリは泳げるようになるために特訓し、ミツオは大嫌いな男に媚びを売り、ノートを見せ、睡眠薬を分け与えるところまで距離を詰める。最後に二人がこぼすのは、殺せなかった無念ではなく、自分がどれだけ手間をかけたかのほうでした。殺意が、労力の量として目に見える形でニイナに手渡されている。だから、実際に殺さなくても足りてしまうのだと思いました。 そして最後、バックミラーにトシヤが歩いている。生きている加害者を置き去りにして、三人が前に進む。笑い声は爆音にかき消され、なお車は止まらない。あの一行で、ずっと鳴っていた曲の持ち主が変わったのだと分かりました。
へやのかたすみさん
30代、男性、好きな作家:中村文則さん、朝比奈秋さん、宮本輝さん
作中にも似たような文言が出てきますが、大学生あるあるとして処理されてしまいがちな問題に、ぐさりと切り込んだ内容でかなり引き込まれました。 こういう声を挙げられるのって、やっぱり文学ならではなのかな。 あと、大学生らしいノリと、中途半端な決断と中断が、ほんとうにリアリティがあって、大学生、と簡単に括ってはいけないと思うけれど、とても臨場感がありました。